2014年 07月 15日 ( 1 )

湖北の記憶~石道寺

◆2014年7月15日(火)

2000年4月29日。
木之本地蔵院の次には、そこから2kmほど東にある
「己高閣・世代閣(ここうかく・よしろかく)」を目指した。
背後の己高山(こたかみやま)の山中にはいくつかお寺が点在していたらしい。
それらのお寺に安置されていた仏像を集めた収蔵庫である。
収蔵庫なので風情はなく、仏像・神像がずらりと並べられていた。
おひと方だけ、魚の籠を手にした「魚籃(ぎょらん)観音像」だけおぼろげに覚えている。

さらっと拝観した後、一番楽しみにしていた石道寺(しゃくどうじ)へ向かった。
静かな集落の奥の里山にひっそりとたたずむお寺である。
ひなびた土地の小さな色褪せたお堂の中に、美しい十一面さんがいらっしゃる。
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ちょうど桜花散る時期。それはまるで散華のように、お堂の屋根や石段をいろどり、
訪れる者を静かに優しく迎えてくれているようだった。
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ご本尊の十一面観音菩薩像は、くちびるにうっすらと紅をさしていた。
正確に言えば、造立当初の色彩がくちびるに残っている、ということなのだが
そう言ってしまうと魂を抜いてしまうみたいだ。

ぽってりした頬やふくよかな体つきが妙に親近感を感じさせる。
そして本で読んだとおり、右足の親指がふわっと反っていた。
人々を救いに一歩を踏み出さんとしているのだとか。
なんて慈悲に満ちた姿なのだろう…。

一説によれば、平安末期のお像だそうだ。小さなお堂でその十一面さんが長年守られてきたのだ。
里の人々の信仰がいかに篤かったかがわかる。
自分たちの生活、というより生きることに欠かせない観音様であるに違いない。
現在では重要文化財に指定されているが、
地域外への宣伝や立派な収蔵庫の建設などせず
これからも古来のかたちで、このお像を守っていかれることだろう。
それが里の人々とその生活にとって、ごく自然な姿なのだと思う。

この十一面さんを拝観できただけでも、湖北にやって来てよかった、と心底感じた。

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(写真は、トレース台に乗せたリバーサルフィルムをコンデジで複写)

















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by lesjoursk | 2014-07-15 22:45 | おでかけ・旅行 | Comments(2)