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佐々木正美 著 『子どもへのまなざし』

◆2016年2月28日(日)

久しぶりに一気に本を読んだ。
児童精神科医の佐々木正美氏の著書「子どもへのまなざし」。

いい本である。今まで自分の中でぼんやりとしか感じられなかったことを
明確に言葉にされており、その一つ一つに、そういうことなのか、と納得できる。
何より、タイトルにあるとおり、子どもへのまなざしがとても優しい。
文章や話しぶり(本書は数回にわたる講演会の内容をまとめたもの)から
たとえ先生のお顔を見たことはなくても、話を直接聞いたことがなくても、
確信をもって、佐々木先生はやさしい、と言える。わかる。

佐々木先生のことを知ったのは、だいぶ前に買った「暮しの手帖」の中のエッセイ。
短い文章だったが、やさしさあふれる、難しい言葉を使わない文章で、
読む私の心にすっすっと入り込んでくる内容だった。
もっとこの人の本を読んでみたいと思った。

それからしばらく忘れてしまっていたが、
先日の新聞の書評欄で再び先生の名前を目にして、
そこで紹介されていた本書を手に取った。

内容の大半が、乳幼児を持つ親、保育・教育にかかわる人に向けた内容で
うちの場合はもう乳幼児を通り越してしまっているので
読んだことがすぐ役立つというものではない。
(もちろんハウツー本ではない。)
でも、これから難しい時期を迎えるであろう息子に対しても
先生がおっしゃる親としての姿勢みたいなものは、とても参考になる。

それともう一つ、挿絵が山脇百合子さん!あの、『ぐりとぐら』の!
先生のやさしいまなざしあふれる本に、まさにぴったりの挿絵!
『ぐりとぐら』シリーズは息子がもっと小さいころにたくさん読んだ。
あの頃のことを思い出させてくれる、すてきな挿絵にも、なんだか胸が熱くなった。


*** 以下に、心に残った一節を引用します。

「過剰期待は子どもの自由な発達のさまたげ」---
 親は自分の子どものことを愛していると思いながら、親の一方的な都合や願望で子どもに過剰期待をしていることがあります。子どもにとって親の存在が、重荷や負担に感じられるのは、親の過剰な期待や干渉があるときです。そしてそのことが、しばしば、子どもの自主性や主体性といったものの発達を阻害して、社会的に自立した子どもに育たないことの原因にもなります。ときとして、放任より悪い結果をひきおこすこともあります。もちろん、保育者や教育者にもそういうことがありえます。
 過剰期待というのは、たいていの場合、子供の将来を思ってそうしているのですけれど、じっさいには、されたほうは非常に苦しいものなのです。…
 …
 過剰期待の意味は、子どもの精神保健や子どもの教育、保育にたずさわる者としては、「いろはのい」として、よく知らないといけない基本的な事柄なのです。…
 子どもにたいする過剰期待というのは、子どもの将来をより豊かなものにしてあげたいという、相手にたいする思いやりや愛情のつもりでいるかもしれません。しかし、これはとんでもなくて、子どもが感じている心理的意味は、拒否されていることなのです。なぜかというと、現状のあなたには満足していないんだということを、別の表現を使っていっているだけなのですから。

「自分のやりたいことがいっぱいある親たち」---
 現代の若い両親は、子どもに目を向けてあげることが、できなくなりつつあります。それは、なぜかといいますと、今日の日本の風潮の中で、ずっと若いときから、親自身が自分の楽しみを生活の中心にするという習慣が身についているからです。ですから、子どもが生まれたとしても、日常の関心は、子どもが求めているほど育児には向かないで、自分の興味とか趣味に向かってしまいがちです。
 …
 けれども、人間というのは、自分の楽しみばかり求めても、本当の幸福は得られないのです。周囲の人の幸せのために自分が生かされていることに、喜びを感じることができるのが、人間としての幸福ですよね。
 …
 子どもの精神科の医者として、お母さんやお父さんにお願いしたいことは、子どもの笑顔や喜ぶ姿に、ご自身が喜べるご両親であってほしいということです。親の希望どおりのことを、子どもがしてくれることに喜びを感じるのではなく、子どもの希望にこたえられることに、幸福を感じられる親であってほしいということです。
 「人間」の本当の幸福は、相手の幸せのために自分が生かされていることが、感じられるときに味わえるものです。このことは本当に本当です。自分の幸せばかり追求することによって得られる幸せなど、本当の幸福ではけっして、けっしてないのですから。

佐々木正美 著 『子どもへのまなざし』_e0091161_20542189.jpg









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by lesjoursk | 2016-02-28 21:19 |